当サイト離婚協議書自動作成サイト 愛と契約web は離婚協議書を自動作成できるほか、さまざまなご相談をチャットボットがうかがっています。近年、離婚後の子育ての在り方が大きな社会問題となっています。養育費の不払いや、親子の面会交流が適切に行われないケースが後を絶たず、子どもの健全な成長に深刻な影響を及ぼしています。このような状況を改善するため、2024年5月に「民法等の一部を改正する法律」が成立・公布されました。この改正は、2年以内に施行される予定で、 共同親権 など、離婚後の子育ての仕組みを大きく変えるものです。

離婚手続にも大きな影響を与える改正となりますので、本日は改正のポイントを分かりやすく解説させていただきます。

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親権に関する重要な変更点

今回の改正で最も注目すべき点の一つが、親権に関する明確な規定の新設です。

改正法では、婚姻関係の有無にかかわらず、父母が子に対して負う責務として以下の点が明確化されました。

  • 子の心身の健全な発達を図るため、子の人格を尊重すること
  • 父母が互いの人格を尊重し、協力すること
  • 親権は子の利益のために行使されなければならないこと

これまでも当然の前提とされてきた事項ですが、法律で明確に規定されたことで、より一層子どもの利益を重視した運用が期待されます。

(民法817条の12)
父母は、子の心身の健全な発達を図るため、その子の人格を尊重するとともに、その子の年齢及び発達の程度に配慮してその子を養育しなければならず、かつ、その子が自己と同程度の生活を維持することができるよう扶養しなければならない。

2 父母は、婚姻関係の有無にかかわらず、子に関する権利の行使又は義務の履行に関し、その子の利益のため、互いに人格を尊重し協力しなければならない。

 

(民法818条)
親権は、成年に達しない子について、その子の利益のために行使しなければならない。

 

共同親権 離婚後の親権者に関する新制度

従来の制度では、離婚後の親権者は父母どちらか一方とされていましたが、改正法では大きな変更が加えられました。

【協議離婚の場合】

  • 父母の協議により、父母双方または一方を親権者と指定できるようになります
  • 共同親権という選択肢が新たに加わりました

【協議が調わない場合】

  • 裁判所が子の利益の観点から、父母双方または一方を親権者と指定します
  • ただし、以下のような場合は単独親権としなければなりません。
    – 子への虐待のおそれがあるケース(身体的なものに限らない)
    – DVのおそれがあるケース
    – その他、親権の共同行使が困難なケース

また、親権者の変更に関しても、これまでの協議の経過を考慮することが明確化されました。これにより、不適切な合意がなされたケースにも適切に対応できるようになります。

 

(民法819条)
父母が協議上の離婚をするときは、その協議で、その双方又は一方を親権者と定める。

2 裁判上の離婚の場合には、裁判所は、父母の双方又は一方を親権者と定める。

3 子の出生前に父母が離婚した場合には、親権は、母が行う。ただし、子の出生後に、父母の協議で、父母の双方又は父を親権者と定めることができる。

 

日常的な子育ての新ルール

共同親権制度の導入に伴い、日常的な子育ての場面での新しいルールも設けられました。

【単独で親権を行使できる場合】
1. 子の利益のため急迫の事情があるとき
– DVや虐待からの避難が必要な場合
– 緊急の医療行為が必要な場合

2. 監護及び教育に関する日常の行為
– 子どもの身の回りの世話
– 学校での定期的な行事への参加など

また、父母の意見が対立した場合の調整のための裁判手続も新設されました。これにより、子の利益を守りながら、より適切な解決が図れるようになります。

 

(民法824条の2)
親権は、父母が共同して行う。ただし、次に掲げるときは、その一方が行う。
一 その一方のみが親権者であるとき。
二 他の一方が親権を行うことができないとき。
三 子の利益のため急迫の事情があるとき。

2 父母は、その双方が親権者であるときであっても、前項本文の規定にかかわらず、監護及び教育に関する日常の行為に係る親権の行使を単独ですることができる。

 

養育費に関する画期的な改正点

養育費の不払い問題に対応するため、以下のような重要な改正がなされました。

1. 養育費債権への優先権付与
・養育費債権に先取特権が付与されます
・債務名義がなくても差押えが可能になります

2. 法定養育費制度の導入
・父母間で養育費の取決めがない場合でも、養育費の請求が可能に
・子どもの生活水準を確保するための重要な改正です

3. 手続面での改善
・執行手続のワンストップ化
・収入情報の開示命令制度の創設

これらの改正により、養育費の確保がより確実になることが期待されます。

 

(民法766条の3)
父母が子の監護に要する費用の分担についての定めをすることなく協議上の離婚をした場合には、父母の一方であって離婚の時から引き続きその子の監護を主として行うものは、他の一方に対し、離婚の日から、次に掲げる日のいずれか早い日までの間、毎月末に、その子の監護に要する費用の分担として、父母の扶養を受けるべき子の最低限度の生活の維持に要する標準的な費用の額その他の事情を勘案して子の数に応じて法務省令で定めるところにより算定した額の支払を請求することができる。ただし、当該他の一方は、支払能力を欠くためにその支払をすることができないこと又はその支払をすることによってその生活が著しく窮迫することを証明したときは、その全部又は一部の支払を拒むことができる。
一 父母がその協議により子の監護に要する費用の分担についての定めをした日
二 子の監護に要する費用の分担についての審判が確定した日
三 子が成年に達した日

 

面会交流(親子交流)の新制度

親子の交流に関しても、より実効性の高い制度が整備されました。

1. 試行的実施の制度化
・審判・調停前等における親子交流の試行的実施に関する規律の整備
・段階的な交流の実現が可能に

2. 別居中の親子交流
・婚姻中の別居場面における親子交流についても規定
・早期からの親子関係の維持を図ります

3. 祖父母等との交流
・父母以外の親族(祖父母等)と子との交流に関する規律も整備
・子どもにとって重要な人間関係の維持が可能に

 

(民法817条の13)
第766条の場合のほか、子と別居する父又は母その他の親族と当該子との交流について必要な事項は、父母の協議で定める。この場合においては、子の利益を最も優先して考慮しなければならない。

 

(民法766条の2)
家庭裁判所は、766条第2項又は第3項の場合において、子の利益のため特に必要があると認めるときは、同条第1項に規定する子の監護について必要な事項として父母以外の親族と子との交流を実施する旨を定めることができる。

 

財産分与に関する改正

財産分与についても、重要な改正がなされました。

1. 請求期間の延長
・従来の2年から5年に延長
・より慎重な判断が可能に

2. 寄与分の明確化
・婚姻中の財産取得・維持に対する寄与の割合を原則2分の1ずつに
・家事労働の価値が適切に評価されます

 

参考:法務省「民法等の一部を改正する法律の概要」

共同親権
共同親権

実務上の注意点とQ&A

Q:共同親権を選択する際の注意点は?
A:父母間で十分なコミュニケーションが取れること、子の利益を最優先に考えられることが重要です。DVや虐待の可能性がある場合は、共同親権は適切ではありません。

Q:養育費の強制執行が楽になるの?
A:はい。優先権の付与や手続のワンストップ化により、より確実な履行確保が期待できます。

Q:祖父母との面会交流はどうなる?
A:新たに規定が整備され、より円滑な交流が可能になります。ただし、あくまでも子の利益を最優先に考える必要があります。

まとめ:離婚相談の専門家としての所見

今回の改正は、子どもの利益を最優先に考えた画期的なものとなっています。特に、共同親権の選択肢の新設や養育費の履行確保に向けた制度の充実は、実務上大きな変化をもたらすでしょう。

一方で、新制度を適切に運用していくためには、専門家の丁寧な対応が必要です。特に、DVや虐待のリスクがあるケースでは、慎重な判断が求められます。

今後も、依頼者の方々に寄り添いながら、子どもの健全な成長を支援できるよう、努めてまいります。

 

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